多重債務(債務の整理)
借金で困っておられる方は多いと思います。多重債務や過払の問題は、テレビで「お金が返ってきますよ」といったような広告が頻繁に流された時期がありました。その結果、多くの事務所が過払の裁判を手がけ、多重債務で悩んでいる方の絶対数が減ったこと、さらには過払訴訟が頻発して大手(例えば武富士)を含む消費者金融会社の収支状況が急速に悪化したなどの事情が重なり、多重債務の相談件数は大幅に減っています。
しかし借金で困っておられる方はまだまだ多いと思います。当事務所では、それぞれの方の状況を丁寧にお聞きした上で、最適の手続きをご提案しております。
債務整理
かつて有効とされていたグレーゾーンの利息(約29%前後が多かった)による負債の残高を、改正後の利息制限法の利息(原則として18%)で再計算してみます。具体的にはデータが入手できる限り過去に遡って借入金と返済金をエクセルに入力して、18%の利息で再計算します。すると負債の額が大幅に減ったり、場合によっては過払いが発生して、消費者金融業者から過払い分の返還を受けることができます。
当時は、過払訴訟は金融業者がなかなか取引履歴を出さなかったこと、専用のソフトなどはまだなく自分でエクセルを使って履歴の再計算をしなければならず相当の知識をもたなければならなかったこと、再計算の結果過払いとなっても原則として裁判をしないと業者から返還を受けられなかったことなど、一般的な訴訟ではなく、過払訴訟ができる弁護士も限られていました。
当時、佐藤は一人だけで兵庫県弁護士会のホームページの構築・更新などをやっていたこともあって、日弁連のコンピュータ委員会のMLにも参加させてもらい、ML上でエクセルの再計算用プログラムをバージョンアップしたりしながら、先端的な取り組みをやっていました。
ところがグレーゾーンを違法とする最高裁判決が相次ぎ、専用のソフトも普及して、だれでも過払訴訟を提起できるようになると、金融業者も判決を待たずに過払い金の返還を行うようになりました。その結果は、皆さん御承知のとおりです。一部の大手はメガバンクに吸収され、銀行傘下に入らなかった業者は倒産したりしました。
その結果、現在では過払訴訟に勝訴することは極めて容易になりましたが、業者から取り立てるのが本当に困難になりました。
それでも利息制限法による再計算によって、負債の残高が大幅に少なくなったり、ゼロになったりすることは多くありますので、試してみる意味は大いにあると思います。仮に負債の残高が残っても、返済金額を減らしたり、返済回数を伸ばしたりする交渉は可能です。
自己破産
負債について再計算をしてみても負債が思ったより減らなかった場合、返済を続けるか、自己破産を選ぶか選択の岐路にたつことになります。
それでは自己破産のメリットとデメリットはどこにあるのでしょうか?自己破産の最大の目標は、裁判所から免責の決定をもらうことです。
免責の決定をもらえば、わかりやすく説明しますと、負債を返済する義務がなくなるということです。ただしどんな場合でも免責が得られるのではなく、浪費、詐欺的な借り入れなどの場合は免責が認められないこともありますので要注意です。
一方で自己破産のデメリットです。まず自己破産は返済すると約束して借りたお金について返済しなくてもよくなるという意味で、モラルハザードとしての面があります。苦しくても約定利息で返済を続けたいと言われる相談者の方はかなりおられます。
次に信用情報機関に「自己破産」として登録されて、一定期間(一般的には数年)与信を受けられなくなります。よくブラックリストに登録されるというのがこのことです。ちなみに本人以外の家族や親族が信用情報に登録されることはありません。
以上のようなメリットとデメリットをよく考えてから、自己破産の手続きをするのかどうか方針を決めるべきであると思います。
民事再生-個人再生手続
民事再生とは、任意整理と自己破産の中間的な手続きです。ごく簡単に説明しますと、裁判所に申請し許可をもらい、原則3年で負債の約2割を分割して返済すれば、残りの負債について免除を受けられるという手続きです。ただし裁判所の許可を受ける関係で、クリヤーする条件がいくつかあります。主な要件としては、
- 将来一定の収入の見込みがあること
- 借金の額が、住宅ローンを除いて、5000万円以下であること。さらに小規模個人再生と給与所得者再生の2種類の手続きがありますが、これは相談の際に詳しくご説明します。
自宅を持っているが、住宅ローンが残っているという場合はどうでしょうか。自己破産してしまうと、自宅は競売にかけられますので、自宅はなくなってします。
そこで住宅ローン特則の再生手続きがあります。その適用要件は主に次の4つです。
- 住宅ローン以外の担保権が設定されていない
- 建物の2分の1以上が、自己の居住用である
- 保証会社に代位弁済されてから6月以上、経過していない
- 住宅ローン以外の無担保債務が5000万円以下