犯罪被害者支援
突然、犯罪に巻き込まれて被害者となる・・
通常の平穏な暮らしからは想像もできないことです。しかしこのことは架空の話ではありません。実際に多くの犯罪被害者や遺族の体験では、犯罪被害者なんて他の世界のできごとであり、まさか自分(または自分の家族)が犯罪に巻き込まれるとは想像もしなかったとおっしゃいます。
ではそんなときにどのように考え、対応すればよいのでしょうか?可能な限り時系列に沿ってご紹介します。
メディアスクラムと直接支援
両方とも聞き慣れない言葉です。メディアスクラムとは、特異な事件や社会的に注目を浴びる事件が発生した場合、報道陣が被害者の自宅などに押し寄せて取材合戦となり、被害者・遺族が日常的な生活を送れない状況に陥ってしまうことを意味します。
被害者に対する直接支援とは、被害者は犯罪直後から生活上の問題、経済上の問題、法律上の問題など、多くの困難を抱える場合がありますが、それぞれの分野のプロが直接被害者の支援に従事することです。例えば、マスコミが殺到して買い物にも行けないときに、代わりに買い物に行ってもらった等の例があります。
兵庫県の直接支援の相談窓口としては、少なくとも3つあります。
第1はひょうご被害者支援センター(電話078-367-7833)、
第2は兵庫県弁護士会被害者相談窓口(電話078-341-1717)、
兵庫県警被害者相談室(電話0120-338-274)です。
実は、この3者は連絡を取り合える関係にあり、どこの相談窓口の電話をしても、高い確率で信頼できる相談窓口にたどりつけます。不安がらずに電話をしてみて下さい。
警察の捜査との関係
犯罪の発生が認知されると、警察が捜査を始めます。これはテレビドラマでしばしば放映されるのでイメージがわきやすいと思います。しかし被害者・遺族と警察の関係はドラマでは出てきません。警察官の要請にどのように対応するのか。自分の体調や精神状態を配慮してくれるのか、それとも捜査に協力するために多少無理をしてでも応じるべきなのか。報道陣が殺到したときに警察は動いてくれるのか、などなどいろいろな疑問が湧いてきます。
直接担当の警察官に不安な点を尋ねてよいし、警察内部の被害者専門の部局(被害者支援室)に相談するのもよいと思います。また弁護士会に相談して犯罪被害者の分野の経験がある弁護士を紹介してもらうこともできます。
加害者の裁判が始まる可能性が高い場合は、いざ裁判が始まってあせるよりは、早い時期から弁護士探しをされた方がよいと思います。弁護士費用については、国選被害者参加弁護士の制度もありますので、活用を検討してみて下さい。
刑事裁判との関わり方
捜査が完了すると刑事裁判が始まります。被告人(加害者)には基本的に弁護人がつけられます。
これは自分が選任する私選弁護人か、裁判所によって選任される国選弁護人かという違いはありますが、必ず弁護士がつけられます。これに対して被害者は自分で弁護士を選ばなければなりません。もし弁護士の心あたりがなければ、兵庫県弁護士会か法テラス兵庫に電話をして、犯罪被害者に精通した弁護士を紹介してもらったり、無料法律相談を受けることができます。
被告人(加害者)が裁かれる刑事裁判は、犯罪被害者・遺族にとって非常に重要な場です。以前は被害者は傍聴席に座っているだけで、意見を述べたり、被告人に質問したりすることはできませんでした。しかし犯罪被害者の叫びがようやく届くようになり、何回かにわたる制度の改革により、犯罪被害者の地位・権利が大幅に改善されてきました。
まず優先的に傍聴できること、刑事裁判の訴訟記録を閲覧したりコピーをもらったりすること、被害者の心情に関する意見を法定で陳述することが認められました。
続いて裁判員裁判の導入とほぼ同時に「被害者参加制度」が導入されました。この制度の下では、被告人に被害者が質問すること、情状証人に質問すること、検察官の論告求刑の後に被害者独自の論告求刑が可能です。これは画期的な制度です。ただしいずれもやり直しのきかない一度きりの法廷の手続きですので、是非弁護士に依頼して、周到な準備をすることをお勧めします。
裁判所が出した判決にどうしても納得できない点がある場合、検察官に協議を申し込んで、意見交換が可能です。ただし制度としては被害者に決定権はなく、検察官しか控訴することはできません。
損害賠償請求権
刑事裁判が終われば、民事裁判で損害賠償請求です。場合によって、刑事裁判の開始前や裁判手続き中に示談の話が出てくることがありますが、多くの被害者・遺族の方は示談が軽い量刑につながるのではと考え、判決まで示談することはまれです。
近年の司法改革の流れの一環として、損害賠償命令の制度が導入されました。一言でいうと、被告人(加害者)の刑事裁判を担当した裁判官が、刑事裁判の終了直後に、事件によって被害者・遺族が受けた損害額を決めてくれるという制度です。簡易迅速に損害額が決められるため、もっと活用されても良い制度です。
損害賠償命令を使わない場合、民事裁判を提起することもあります。多くの場合、裁判所が損害額を決めてくれますが、加害者に支払能力がないことがほとんどです。加害者に支払能力がない場合、犯罪被害者給付金制度があります。現在は警察が申請の窓口になっていますが、まだまだ金額も手続も十分とはいえません。今後の大きな課題です。
当事務所の経験
当事務所の弁護士は古くは信楽高原鉄道の列車事故(平成3年)から、何度も被害者の側にたって活動を重ねてきました。
裁判員裁判導入後も、ご縁があって神戸地裁における裁判員裁判+被害者参加制度の第1号事件を担当させて頂きました。一般的な弁護士よりも、犯罪被害者とともに歩む経験も知識も蓄積されていると思います。なによりも、被害者のお気持ちを尊重したいと考えています。どうぞ是非お気軽にご相談下さい。