心神喪失者等医療観察法について(1)
私が住んでいる兵庫県において、またしても悲惨な事件が起きてしまいました。淡路島の洲本市において、5人が近隣住民によって刺殺されるというたいへん衝撃的な事件です。即日被害者のすぐ隣に住む男が逮捕され、現在警察によって取調中です。
問題は、この被疑者が過去、精神病院に入通院歴があったことです。つまり精神に何らかの障害(病気)が認められる可能性があるのです。被疑者に対する取調の状況は、基本的に情報公開されませんので、その被疑者の精神障害がどの程度のものか把握することはできませんが、可能性としては心神喪失(是非善悪の判断がまったくできない常況にある)とされることもゼロではありません。その場合は、刑事責任能力がないとして、刑事責任は問われないことになります。もちろんこれは不確かな情報による暫定的な想定で、どのような処分が下されるかは現時点ではまったく分からないことにご注意下さい。
では、刑事責任がないとされた場合はどうなるのでしょうか。この場合でも加害者がすぐに釈放されることはありません。つまり、加害者に対しては、このブログのタイトルである「心神喪失者医療観察法」に基づいて、「治療」をキーワードにした処遇が行われます。
具体的には、まず検察官は、医療観察法による医療及び観察を受けさせるべきかどうかを地方裁判所に申立てを行います。
次に、検察官からの申立てがなされると、鑑定を行う医療機関に入院し、裁判官と精神保健審判員(必要な学識経験を有する医師)の各1名からなる合議体による審判で、医療観察法による処遇の要否と内容の決定が行われます。
審判の結果、医療観察法の入院による医療の決定を受けた人に対しては、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定入院医療機関)において、手厚い専門的な医療の提供が行われます。
では実際にこの制度がどのような運用状況なのか調べてみたいと思います。(続く)
弁護士 佐藤健宗