福知山市花火大会の爆発事故について(5) 佐藤健宗
今回のブログは「賠償責任保険」についてです。新聞記者と話していて、賠償責任保険の仕組みを理解していない人が多いことに気がついたので、解説しておきます。
福知山市は、今回の爆発事故の被害者への賠償(くどいようだが補償ではない)について、全国市長会が加入している賠償責任保険契約を使って賠償金を捻出できるのではないかか、という設問です。
回答から先にいうと、簡単ではなく、むしろ極めて難しい、ということになります。
まず賠償責任保険の定義です。賠償責任保険とは、個人の生活や企業の業務遂行で、偶然な事故により、第三者(今回は被害者)に対する法律上の賠償責任を負担した場合に、被保険者が負担する賠償金を填補する保険である、と定義されます。
ここで最も重要な点は、個人や企業(今回は福知山市や市商工会議所)に法律上の賠償責任がある場合に限って保険を使えるということです。つまり福知山市や市商工会議所に、今回の爆発事故について過失責任が認められる場合に限って、保険会社に賠償責任を肩代わり(この肩代わりというのは法律用語としては正しくありません。正確にいうと、市が負担する賠償金を填補してもらうということになります)してもらえるということです。
これは個人が契約する自動車保険の賠償責任保険と同じです。個人が自動車事故を起こし、その事故について過失責任がある場合に、保険会社が第三者に賠償金を払ってくれるという仕組みです。
となると、福知山市が、被害者救済のためにといってもそれだけでは保険会社は賠償金を填補してません。実務的には、被害者が市に対して、市側に過失があり、市側に賠償金の支払義務があることを証明できた場合に限って賠償金が填補されるということになります。被害者には過酷な話ですが、これが賠償責任保険の仕組みなのです。
弁護士 佐藤健宗(兵庫県弁護士会明石支部)