福知山市花火大会の爆発事故について(3) 佐藤健宗
前回のブログでは、安全上の問題についてふれましたが、今回は賠償問題について触れてみたいと思います。
まず「賠償」と「補償」の違いです。事故などが起きて、関係者に損害(生命身体の損害も、物的損害も両方とも含みます)が発生した場合、しばしば「補償」という言葉が使われます。はっきりって事故や事件のときに「補償」という言葉を使うのは間違いです。「補償」とは、例えば国や地方自治体が、正当な業務の一環として財産を収用するような場合(具体的には、道路を拡幅するために私有地を収用するというような場合)に金銭を支払うことを意味します。その最大のポイントは、収用する側に違法性や責任がないことです。つまり、事故や事件の場合に「補償」という言葉を使うことは、補償金を支払う側の違法性や責任を曖昧にしてしまうのです。事故や事件で、関係者に違法性や責任がある場合はあくまでも「賠償」というべきでなのです。
それでは今回の爆発事故で、誰に賠償責任があるでしょうか。
夜店の店主に賠償責任があることは間違いないと思います。前回も指摘しましたが、夜店の店主はガソリンの携行缶を炎天下(別の報道では、小型発電機がはき出す高温の空気の排気口の近く)に放置し、さらに携行缶のキャップを開ける際に圧力抜きバルブを使わずにガソリンを噴出させてことは過失に該当するので、賠償責任があります。
それでは主催者、特に実質的な主催責任者である福知山市はどうでしょうか。これはなかなか難しい問題です。ガソリンの携行缶の取扱を直接に行ったのは市の担当者ではなく、市と雇用関係もない店主です。このような場合、市側に責任(賠償義務)があるというためには、市側に安全管理の義務があり、なおかつ店主の過失について予見可能性が認められることが必要です。一般論としては、市に花火大会における安全管理の義務はありますが、店主についてのガソリン携行缶の管理や、キャップの開け方についてまで安全管理を行う義務があるかというと判断が分かれるところだと思われます。さらに予見可能性についていうと、市の担当者に店主の過失行為を予見することができたかというと疑問なしとはいえないでしょう。今後、交渉や裁判が始まると思われますが、その場での大きな争点になるでしょう。
弁護士 佐藤健宗(兵庫県弁護士会明石支部)