不倫の相手方に対する慰謝料(3) 佐藤健宗
2013/07/26
一昨日、神戸地裁で言い渡された不倫の相手方に対する慰謝料の判決の内容が分かりましたので、核心部(慰謝料の支払いを否定した理由づけの部分)をご紹介します。
記
「夫婦の一方配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかにかかわらず、他方配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある」(最高裁判所昭和54年3月30日判決)というのが現在までの多くの裁判例の見解である。
しかし、そもそも、夫婦それぞれは独立対等の人格的主体であって、相互に身分的・人格的支配を有しないのであるから夫婦の一方が自らの意思決定に基づき不貞行為に関わった以上、加担した第三者に「配偶者としての地位」の侵害を理由として賠償責任を導くのは適切ではない(不法行為法では個人の権利侵害に対する救済が目的とされるのであるから、夫婦関係自体あるいは家庭の平和を被侵害利益とみるのは正当ではなく、これらの侵害を理由にするのは失当である。)。したがって、上記最高裁判決のように、不貞行為の相手方に対する慰謝料請求権を認めること自体相当ではないというべきである。」
以上が判決の理由づけです。法律による夫婦というものに対する見方、夫婦関係や家庭の平和それ自体は不法行為法で保護される個人の権利とは異なるという立論など、示唆的な説示です。
さて大阪高裁ではどのような判断がなされるでしょうか。