不倫の相手方に対する慰謝料(2) 佐藤健宗
2013/07/25
前回の(1)で、従来の裁判所の考え方を紹介しました。今回のブログでは、肯定説(不倫の相手方に対する慰謝料を肯定する考え方)と否定説(慰謝料を否定する考え方)の根拠を整理したいと思います(判例タイムズ1100号の水野紀子教授の論文を参考にさせて頂きました)。
肯定説
①夫婦の相互愛は家族的なつながりの中心にあり、法によって保護されるべきであるが、不倫によってこれを破壊したものがペナルティーを負うことは当然である
②慰謝料の支払いができないとなると、「不倫の自由」を認めることになり、ひいては婚姻家族の崩壊を導きかねない
否定説
①慰謝料の支払いを認めるためには夫婦間で貞操義務を認めることが必要であるが、それは夫婦相互間に人格的支配権を認めることになり、不当である。人には恋愛の自由がある。
②美人局や売春類似の行為、さらには脅迫などの行為を正当化することになる。
③妻から不貞の相手方に対する慰謝料請求は、既婚男性に対する強制認知の提訴を抑制する効果を生み出してしまう。
④欧米の主要国の法制では、不倫の相手方に対する慰謝料を現在では認めていない。
どうやらこの問題は、現在最高裁で問題になっている非嫡出子の相続分を制限する法律の無効論争にも関係する深い深い問題のようです。
佐藤健宗